松下幸之助「ノレンわけ」
昔は、お店に何年かつとめて番頭さんになったら、やがてノレンをわけてもらって、独立して店を持ったものである。
今でもそういうことが、一部で行われているかもしれないけれど、それでも世の中はずいぶん変わった。
生産も販売もしだいに大規模になって、店の組織も会社になって、だからもうノレンわけなどというものはすっかり影をひそめてしまった。
つまり、独立して店を持つということが難しくなってしまって、会社の一員として終生そこで働くという形が多くなったのである。
世の中の進歩とともに、大規模な生産販売に移行していくのも自然の姿であろう。
だからこれもまたやむを得ないことかもしれないが、しかしノレン分けによって、独立の営みをはじめるというあの自主的な心構えまでも失ってしまいたくはない。
会社の一員であっても、実はそのなかで、それぞれの勤務の成果によって、それぞれにノレンわけをしてもらっているのである。
だからみんなその仕事では独立の主人公なのである。
そんな気持ちで、自主的な心構えだけは、終生失わないようにしたいものである。
(参考文献 道をひらく 松下幸之助)
(感想)
◆サラリーマンでいる時にやっておきたいこと
組織の歯車になることを嫌がる人は少なくないと思いますが、歯車が嫌なら独立するしかありません。
しかし、それができない人は不平不満を言いながら会社に行くことになります。それでは良い仕事にはならないでしょう。
そこで発想を変え、巨大な歯車になってみるのはどうでしょうか。
◆「大きな歯車」になるとどうなる?
そもそも大きな歯車は回転の中心に配置されることが多いですから、言い換えればその組織やプロジェクトの中心人物になっているということになります。
また、歯車が大きければ他の小さな歯車と組み合わさる余裕が生まれますから、より多くの人と関わりつながることができるともいえます。
「噛み合う」という言葉があるとおり、いろんな人とがっちり組み合えば、あなたなしでは物事が進まなくなる。それはつまり、あなたがその組織のキーマンになるということに他なりません。
組織の中ではどうしても人とつながる必要がある。そこで自部門だけでなく他部署の大勢の人とつながっていれば、部門間をまたぐ業務や、部門間の利害が対立する場面でも仕事がしやすくなります。それこそ上層部とつながっていれば、彼らが持つ権限を活用できる可能性が高まるでしょう。
◆「小さな歯車」のままだと……
一方、小さな歯車では、多くの人と噛み合うスペースがありません。自分より大きな歯車と関われば、彼らの動きに自分を合わせなければならない。スピードを変えたり、逆回転などはできない。
それに、もしひとり歯車になれば、誰とも関わらないということであり、どこにも影響力がなく、まったく存在価値がないことになる。いわゆる空回りというものです。
人と関わるのは疲れるし、いろいろストレスもありますが、自分の歯車を大きくしていくことは、それだけ社内での影響力が大きくなることを意味し、やがて「キミがそう言うなら」などと自分のペースや希望条件で仕事ができるようになる可能性が高まります。
そこで人間関係を「いつもの同僚」だけに限定せず、飲み会を「いつものメンツ」だけに限定せず、異動や転勤を嫌がったりせず、新しい人と出会うチャンスを増やしていきたいものです。