日中にパフォーマンスを大幅に改善させる方法とは
<答え>15分の昼寝
睡眠負債は知らぬ間にコツコツと積みあがっていくため、返済もコツコツと行うのが重要。そこで使えるのが、「昼寝」のテクニックです。
昼寝の研究が進み始めたのは1990年代で、たとえば104人の健康な男女を睡眠不足にさせた実験では、数分~数時間の昼寝によって、注意力や論理思考などの大幅な改善が見られました。
以降も似たような追試が行われ、空軍パイロットを対象にしたNASAの研究でも、1回40分の昼寝でパフォーマンスが34%改善し、注意力は100%の完全回復をみせるなど、睡眠負債のダメージを防ぐ効果が広く確認されています。
いまではグーグルやウーバーといった名だたる企業も昼寝を奨励しており、グーグルなどは「エナジーポッド」という専用の睡眠マシンまで導入しているほどです。
実は、睡眠に問題がない狩猟採集民でも昼寝を行います。
カリフォルニア大学がボリビアのチマネ族の暮らしを3年にわたって記録した研究では、次の事実があきらかになりました。
・夏の時期は、年間の睡眠時間の22%を昼寝に使う
・冬の時期は、年間の睡眠時間の7%を昼寝に使う
狩猟採集民の正解でも、昼寝で体力の回復を計るのは普通のようです。
現時点では昼寝の最適量まではわかっていませんが、多くのデータでは1回15~30分ほどでリフレッシュ効果が得られています。狩猟採集民も1回15分の昼寝で済ますケースが多いため、まずはこのレベルから試してみてください。
最初のうちは「20分だけ眠るのは難しい」といった感想が出るかもしれませんが、心配はいりません。ある実験では、快適な椅子に座りつつ目を閉じて15分休んだだけでも睡眠時と似たような脳はが現れ、記憶テストの結果も向上したとの結果が出ています。
昼寝が苦手な人でも、とりあえず10~15分だけ目を閉じて何もしない時間を作ってみましょう。
近年では、昼寝のリフレッシュ効果を高める方法として、「コーヒーナップ」というテクニックも開発されています。やり方は簡単で、15~20分の昼寝の直前に1杯のコーヒーを飲むだけです。
コーヒーと昼寝の組合せは意外なように思えますが、その効果にはいくつかの実証研究があります。
具体的には、疲れ気味の被験者に15分のコーヒーナップを試した実験では、普通に昼寝をしたグループよりもドライブシュミレーターの成績がアップ。日本で行われた研究でも、昼寝前に200mgのカフェイン錠を飲んだ学生は疲労感が減り、記憶力テストの成績も上がりました。
このような現象が起きるのは、カフェインが脳に達するまでに20分かかるからです。そのため、コーヒーを飲んでから20分後に目を覚ますと、昼寝のリフレッシュ作用にカフェインの刺激が組み合わされて相乗効果をもたらします。昼寝の効果を高めたい方は、試してみてください。
(参考文献 最高の体調 鈴木裕 P159抜粋)